秋田県 美郷町で行われる”六郷のカマクラ”

秋田県美郷町で行われるお祭りに六郷のカマクラがあります。
開催の時期は2月11日から2月15日までの5日間と決まっており、それぞれでやるべきことが決まっています。11日には蔵開きや天筆書初め、12日は天筆掲揚、鳥追い行事を経て、15日にはお祭りのメインとなる竹うちと天筆焼きが行われ、ここまでが1つのお祭りです。その歴史はかなり古く鎌倉時代から行われており、子供から大人まで楽しめるイベントです。特に竹うちは、見た目のインパクトやエキサイティングな応酬なども相まって外国人がこぞってやってくるなど、世界的に知られたお祭りです。

六郷のカマクラでは豊作と安全を願うだけでなく、凶作などを回避するための悪魔払い、この1年の運勢を占う要素を兼ねたイベントであり、日本中どこでも行われていた小正月の行事の1つです。他の地域ではイベント化が進んだり、行事自体行われなくなったりするケースが目立ちますが、このエリアでは700年前から脈々と続く伝統が受け継がれており、本来の小正月の行事の姿が保たれています。昭和57年には重要無形民俗文化財に指定されるなど、単にエキサイティングなお祭りというだけでなく、民族的な価値も大いにあることが分かります。

願いを叶える天筆

お祭りに欠かせない天筆とは、緑や黄色など色鮮やかな色紙をつないで、そこに書初めを行います。これを吉書といい、子供が自分で書くものとされています。漢字も多いので子供が書けないケースもありますが、この場合は父親などが書き、子供の願い事もそこに書いていくことになります。古い昔には男の子だけが天筆を用意され、女の子は作らなかったという伝統があったものの、現在は子供なら誰しもが書きます。この天筆は青竹に結んで家の外に抑揚するため、外から見ると色鮮やかな天筆が風にはためく感じになるので迫力があります。

もう1つ重要な鳥追い行事ですが、六郷のカマクラが始まった段階で鳥追い小屋が作られます。カマクラのような雪室を作って鳥追い歌を子供が歌うような形になりますが、一般的なカマクラのイメージとは異なり、屋根にあたる部分が茅で出来た筵になっているからです。この理由は一酸化炭素中毒を防いで換気が行われるようにするためですが、このことを昔から考えて行われるなど所々に知恵が存在します。餅つきが様々な場所で行われ、豊作を祈願する儀式が行われるようになると、いよいよ最大のメインである竹うちが始まります。

六郷のカマクラ最大のメイン 竹うち

竹うちは美郷町を2つに分け、北軍と南軍に分けられて行われ、それぞれの男性が長い青竹を手にして相手に向かって打ち合います。それまでは静寂に包まれた会場もいざ戦いが始まると修羅場のような光景が繰り広げられ、竹の音や男性たちの怒鳴り声などが響き渡ります。家族などは静かにそれを見守るしかありませんが、観光客は格闘技を観客のように声援を挙げます。1回戦、2回戦と戦いが行われると、ここで天筆焼きの順番です。各世帯で掲げられた天筆が子供たちの手によって焼かれ、天高く舞うことを願い焼いていきます。
いよいよ3回目の戦いとなると、もはや気迫の戦いです。この戦いをもって判定が行われます。雪不足になると中止になるだけでなくあまりにも甲乙がつけがたい状況では引き分けというのもあります。もちろん憎しみながら竹を打ち合うのではなく、あくまでも豊作などを占うために行われます。最後のフィナーレは男性たちが集まって、割れた竹でご神火を打ち合って火柱が上がり、そこから舞ってくる火の粉の姿を見届けることで5日間のお祭りが終わります。外国人はこれを見て興奮するように、この5日間は美郷町全体が異様な空気に包まれていきます。

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